在タイ日本国大使館の大鷹正人大使らは2日、タイ政府庁舎を訪問し、南部の洪水被災地への緊急援助物資をアヌティン・チャーンウィラクン首相らに手渡した。
カオソッドなどの現地報道によると、緊急支援プログラムの一環で、被災者支援のためのテントや毛布、マットレス、水ろ過装置など国際協力機構(JICA)を通じて届けた。アヌティン首相は、災害時の日本の継続した支援に感謝すると述べ、協力と善意の上に築かれた両国の密接な関係を再確認した。
一方、タイ政府は2日、1世帯当たり9000バーツの支援金、総額8億7719万4000バーツを9万7466世帯に振り込む。ソンクラー県は7331世帯、サトゥーン県は1万8121世帯、ナラーティワート県は7305世帯、パッターニー県は1709世帯。
タイ政府が支給する洪水救済金9000バーツを巡り、手続きが煩雑だとハートヤイ市民から苦情が殺到している。受け取りには身分証明書と家籍のコピーが必要で、「水没して書類を持っていない」などと訴える声が上がっている。
深刻な洪水被害が発生した南部ソンクラー県では、救済金受給の手続きのため、多くのの地元住民がハートヤイ市役所を訪問。職員が身分証明書と家籍のコピーの提出を要求すると、「事前に明確な説明が無かった」と混乱が広がった。
地元住民のジラサック・シッティヤノントさん(66歳)は、オンライン登録を試みたがインターネット接続の問題で失敗して市役所に来たと話し、「苛立っている。家が損傷して掃除も必要なのに、益々混乱する。とても失望している」と憤った。
別の住民も政府に手続きの簡素化を訴え、「賃借人の場合は大家が申請を証明する必要があるが、大家はバンコク在住だ。洪水で何もかも水没し、書類も提出できない。9000バーツの受給にこれほど手間取るなら、最初から要らない」と話した。
洪水非常事態対策本部は2日、ハートヤイ郡での活動を「救助」から「復興」へ移行。多数の作業員を動員して道路や住宅を清掃し、電力と水道の復旧に注力する。電力は全体の92%が復旧。水道は2日夜か3日朝までに100%復旧する予定。
ハートヤイで被災した女性は1日、「子どもにミルクと食べ物が必要だが、お金も無くどこで手に入るか分からない。水も電気もなく、ロウソクの灯りで暮らしている」と語った。
また、パッタルン県のソンクラー湖岸の低地にある5郡では、滞留洪水により数千世帯が深刻な影響を受けている。家や学校の浸水が続き、多くの住民が帰宅できず、授業や仕事を再開できない状況だ。現地報道によると、連日の豪雨の後に猛暑が3日間続き、世界農業遺産に指定されたタレーノーイ湿地牧畜の水牛がショック死しているという。