矢野経済研究所は29日、アセアン9カ国(タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピン、シンガポール、カンボジア、ラオス、ミャンマー)の四輪車・二輪車と車載用電池市場の調査結果を公表した。2030年のアセアン9カ国の四輪新車販売台数は、年間454万台と予測。そのうちバッテリー式電気自動車(BEV)は、アグレッシブ予測で81万台(全体の17.8%)になるとしている。
同研究所によると、 2023年のアセアン9カ国のBEV新車販売台数は14万5000台。国別ではタイが7万6000台で、ほぼ半数を占めた。
政府の電動化推進による現地生産の義務化や、BEV利用者が富裕層から中所得者層に拡大することを前提とするアグレッシブ予測では、2025年に25万4000台(四輪車新車販売台数全体の7.2%)、2030年には81万台(同17.8%)になると予測。
一方、低価格な車両販売やアフターサービス網整備の遅れ、充電インフラの不足などの課題解決に時間を要することを想定したコンサバティブ予測では、世界的なHEV(ハイブリッド・エレクトリック・ビークル)再評価の影響もあり、2025年に18万6000台(同5.2%)、2030年に37万台(同8.1%)に留まると予測している。
タイでは2022年、「EV3.0」政策による補助金制度が始まり、富裕層のセカンドカー需要の取り込みに成功。都市部のアッパーミドル層にも購入層が拡大し、販売台数を押し上げた。
しかし、2024年の「EV3.5」政策への移行で補助金が減額。2023年後半からは、参入企業の増加で中国系BEVメーカーを中心に値下げ競争が激化している。そのため、タイ市場ではリセールバリューの悪化や、更なる値下げを警戒した買い控えも発生している。
また、BEVのアセアン市場参入が1~2年しか経っておらず、各国の厳しい道路状況と気象条件下で使用された車両の消耗具合、バッテリーの劣化度合い、残存価値などが不明瞭な状態。高額な補修部品や保険料、修理対応が可能な拠点が限定されていることが、普及の足かせになる可能性があるとしている。
同社は、アセアン地域全体でのBEV販売拡大に向け、アフターサービス網の整備や、地域特性・慣習を反映した車両づくり、安価な価格でのシェア獲得への対応が欠かせないとしている。
調査は2024年4月~6月、アセアンに参入するモビリティメーカーや電池メーカーを対象に、同社研究員による直接面談(オンライン含む)と文献調査を併用して実施した。