タイ南部で発生した大規模洪水による死者数について、当局の発表が二転三転し、混乱を招いている。政府による意図的な隠匿の可能性を指摘する声も上がり、国家警察の元副総監や前教育副大臣のタイ貢献党議員は、正確な死者数を報告するよう要請した。
PPTVなどの現地報道によると、現地で救助活動をしているタイ国家警察のスラチェート元副総監は、自身のフェイスブックページで正確な死者数を明らかにするよう政府に要請した。政府は1日時点で死者数を145人と発表。前日には170人と発表していた。
スラチェート氏は、現地で既に約550人の遺体を確認したと明かし、「アヌティン・チャーンウィラクン首相は本当の死者数を明らかにしてほしい。真実を受け止めて、遺体を発見した場所を明確に示し、警察と医療スタッフに指示して遺体の遺族への引き渡しを迅速にしてほしい」と訴えた。同氏は、現在の死者数が1000人を超えていると話している。
スラチェート氏は、政府当局が死因について、「階段からの転落死」「腎不全」「その他の原因」など、洪水と関係のない原因として処理し、死者数を低く抑えようとしていると指摘。洪水のために人工透析を受けられずに死亡した患者を、腎不全による死亡と分類するケースがあるという。同氏は、アヌティン首相の責任回避と、支援金の支出を減らそうとする試みだと批判した。
また、タイ貢献党のリンティポーン・ワリンウッチャラーローチ前教育副大臣は、「アヌティン首相が死因を分類して補償手続きを複雑化させ、被災地の苦しみを増大させている」と批判。国家災害センターのシリポン報道官は先月26日、ハートヤイ病院に搬送された80人の遺体を「洪水による死者ではない」と発表した時点から混乱が始まり、翌29日には搬送された131人のうち、「一般的な病気」11人、「不自然な死因」65人などと分類して公表。現場で遺体を確認した救助隊の報告と食い違っており、透明性の欠如が国民の不信を招いていると指摘した。