タイ保健省疾病管理局(DDC)はこのほど、日本を訪問するタイ人に対し、日本国内で発生している「人食いバクテリア(劇症型溶血性レンサ球菌感染症:STSS)」に警戒するよう注意喚起した。6月2日時点の累計感染者数は977人で、統計を取り始めた1999年以降、最多を記録した昨年の報告数を超えた。
厚生労働省によると、STSSは溶血性レンサ球菌(溶連菌)が引き起こす重篤な感染症。初期症状は喉の痛みや発熱で、敗血症などを引き起こして急速に多臓器不全が進行する。死亡率は約30%。
クルンテープ・トゥラキットの報道によると、国立感染症研究所は、1月1日から5日26日までのSTSS累積患者数が690人、死者は163人(23.6%)と報告。年齢別では70~79歳が最多で149人(21.6%)、次いで80~89歳が143人(20.7%)、60~69歳が110人(15.9%)だった。
タイ国内ではSTSS感染者の報告は無い。風土病であるA郡レンサ球菌の感染者は報告があるが、軽症だという。
DDCは、日本を旅行するタイ人に対し、マスクの着用とこまめな手洗い、アルコール消毒の携帯などを推奨している。現時点で、世界保健機構(WHO)は日本への渡航規制を勧告していない。
厚生労働省は、STSSの日本での増加について、2023年夏以降、A郡溶血性レンサ球菌による急性咽頭炎の患者数が増加していることを要因の1つに挙げている。新型コロナウイルス感染症の対策が緩和された2022年以降、世界的に多くの地域で患者数は増加傾向にあり、日本に限定されるものではないとしている。
同省は日本への渡航について、「STSSの流行を理由に旅行を取りやめる必要はありません。手指の衛生や咳エチケット、傷口の清潔な処置など、基本的な感染症対策をお願いします」としている。