今年で33回目となる2023年福岡アジア文化賞の大賞に、タイの歴史学者であるトンチャイ・ウィニッチャクン氏(65歳)が選ばれた。福岡アジア文化賞委員会が19日発表した。授賞式は9月12日に開催する。
同賞は、アジアの固有で多様な文化の保存と創造に顕著な業績を挙げた個人や団体を顕彰するもの。毎年1人または1団体に授与されている。
トンチャイ・ウィニッチャクン氏はバンコク都出身。1984年にシドニー大学大学院に留学した際に著わし、2003年に出版された博士論文「地図がつくったタイ: 国民国家誕生の歴史」で、国民や国家という自明の観念が、実は地図の制作と普及によって恣意的かつ人為的に創造されてきた歴史を、タイを事例として実証的に考証し、世界の人文・社会科学に大きな影響を与えたことが受賞理由。
同氏は受賞について「感動と驚きで圧倒されました。とても光栄に思います」とし、「現実の生活や社会と無関係と思われるような知識でも、それらを追求することと、民主主義や社会正義を擁護することは、相互に貢献するものだと信じています」とメッセージを寄せた。