タイ南部を襲った洪水は徐々に水位が低下し、広範囲の被害が露わになっている。ソンクラー県ハートヤイのダウンタウンにある地元市場のキムヨン・マーケットでは、破壊された店舗や瓦礫、商品が通り沿いに積み上がっている。
カオソッドなどの現地報道によると、パラドーン・プリサナナンタクン首相府付大臣が27日、「水位が下がり始め、状況が正常に戻りつつある」と報告したことを受け、現地で支援活動している最大野党の人民党議員は、「ハートヤイは正常化していない。政府は現実を直視すべきだ」と批判を強めた。
被災地で4日間、支援活動をしている人民党のパカモン・フナナナント議員は「政府は別世界にいるようだ。多くの地域では水が引かず、食料や飲料が届いていない。洪水の爪痕は甚大だ」と語った。
また、ソンクラー市が大雨の脅威を過小評価したとして、SNS上では市民の怒りが爆発。市のフェイスブックには批判コメントが殺到している。市当局は当初、市全体ではなく運河近くの特定の地域のみ警報を発令。市長は「洪水は22日までに解消する」と話し、運河の排水能力に自信を示していた。
親族や友人と連絡が取れない人の声も相次いでいる。有名ウルトラトレイルランナーのサンヤさんは28日、ハートヤイ在住の母親や妹らと4日間連絡が取れていないとSNSに投稿。「様子が分からない。ニュースを見続けているが、心配でたまらない」と語った。
25日夜に救助ボートから転落した4歳の娘を探していた母親のアモーンラットさんは、27日夕方に遺体が発見されたとフェイスブックに投稿した。
国家警察長官は、ハートヤイに身元確認センターを設置。遺体の身元確認を支援するため、鑑識チームを派遣した。28日正午時点(日本時間)で、113人の遺体を発見している。