タイでは中国テンセント社の「WeChat」や韓国カカオ社の「KakaoTalk」といったスマートフォン用の無料通話・メッセンジャーアプリケーションが進出し、同サービスでトップを走る韓国ネイバー社の「LINE」の牙城を崩そうと必死だが、LINEもこれに対抗する形で同社サービスへの囲い込みを強めている。
■タイでトップを走るLINE、コンテンツ制作会社と提携して新サービス開始
これに対してLINEは昨年大ヒットしたアプリ「クッキーラン」に続けとばかりに昨年頃から、ドラマ、エンターテイメント、ミュージックなどの様々な動画が視聴できる「LINE TV」を日本に先駆けて公開。LINEと連携したアプリをiOSおよびアンドロイド向けに公開。英語、中国語、韓国語、タイ語の4ヶ国語に対応。
同サービスは現在韓国のネイバー社経由のコンテンツと見られる韓国のウェブドラマ「Dream Knight」やK-POPをはじめ、タイで歴代最高の興行収入となった「ピーマークプラカノン」や「I fine thank you love you」などを制作したGTH社から提供するコンテンツが視聴可能だ。
またGTH社は同サービス向けにドラマ「STAYサガ・・チャンチャキトゥントゥ」をバレンタインデーに合わせて公開。日本の佐賀県を舞台にした恋愛ドラマで、人気俳優のサニー・スワン・メーターノン、カオ・スパサラー・タナチャートを起用し大々的にアピール。LINE関連サービスへの囲い込みを強化している。
■LINEの牙城を崩せるか
これに対して中国で人気のWeChatもTV広告、映画、屋外広告などに力を入れている。先日公開したばかりの人気女優アム・パチャラパー主演の映画「Single Lady」にもスポンサーとして参加している。また昨年12月にKakaoTalkもタイで正式にローンチしており、年内にも1000万人ユーザーを目指す計画を進めている。
だが現時点で圧倒的にLINEが優勢のようだ。タイには3000万人を超えるユーザーがいるとされ、総人口が約6700万人であることから単純計算で約半数の人が使用していることになる。
参考程度にしかならないが、11日午後に確認したiOS向けのAppStore(タイランド)では、無料アプリのダウンロードランキングで、2位にLINE、21位にLINEカメラ、24位にLINE TV、27位にLINEレッツゲットリッチ、28位にLINEクッキーランとLINE系列のアプリがランクインしているのに対して、同業他社のアプリは50位圏内には20位にBeeTalk、46位にWeChatがランクインしている程度だった。
数年前までタイでメッセージングサービスと言えば圧倒的にブラックベリーのチャット機能だったが、今ではLINEがその市場を完全に奪っている状況だ。豊富な資金力を持つとされるWeChatが撤退することもないだろうし、タイで正式にローンチしたばかりのKakaoTalkもこれからだろう。栄枯盛衰が激しいこの業界。数年後にはLINEが衰退している可能性も否定出来ない。