2004年12月26日午前7時49分に発生したマグニチュード9.1のスマトラ島沖地震から20年。高さ30メートル超の津波がインド洋の12カ国を襲い、約23万人の命を奪った。タイではアンダマン海沿岸のプーケット、パンガー、クラビー、トラン、サトゥーン、ラノーンの南部6県に津波が押し寄せ、タイ国民と外国人旅行者約5400人が犠牲となった。
公共放送PBSは、当時の被害者にインタビュー。スマトラ島沖地震について両親から話を聞いた20歳の女子大学生(当時生後4カ月)は、津波から逃げるため母親と山に登ったと述べた。現在はプーケットの大学に通っているが、津波発生時の対応は詳しく知らないが、山に逃げることだけは知っていると不安そうに語った。
プーケット市民でラーチャパット・プーケット大学の女子大学生は、2004年の津波発生時にはまだ産まれていないが、津波については映画で知り、想像できるという。小学校から大学まで津波の避難訓練を受けたことが無いため「訓練は大切だと思う」と語った。
タイは巨大津波に襲われた経験が無く、警報システムなども整備されていなかったため、不意に発生した災害に虚を突かれる形となった。タイは津波発生から5カ月後に自然災害警報センター(NDWC)を設立。2007年には災害予防・軽減法を可決した。
タイには現在、早期警報塔が354基あり、そのうち18基は津波危険地域にあるという。サイレンが鳴り、タイ語、日本語、英語、ドイツ語、中国語の5カ国語で警報が発表される。
津波警戒エリアに指定されているプーケット市のカロン・ビーチには、「TSUNAMI HAZART ZONE」と書かれた警告看板が各所に設置され、地震が発生した場合、素早く浜辺から離れて高台へ避難するよう観光客に注意を呼び掛けている。道路沿いには避難経路を示す看板もあり、浜辺から約800メートル離れた山の近くの高台に避難できる。
一方、20年前の被害を機に建設された避難施設は、老朽化が進んでいる。パンガー県タクワパー郡にある避難所は扉やガラスが破損。多くの津波避難センターが同様の状況で、電気やトイレ、水道も故障し使用できないという。かつては日常的に実施していた避難訓練も多くの地域で中止。津波の早期警報塔や津波信号機も老朽化しており「サイレンは鳴らないようだ」と語る沿岸の住民もいた。